ヘルシーで飽きの来ない身近な食品、お豆腐。お料理だけでなくスイーツにもダイエットにも大活躍。その様々な製法をご紹介-その1

ヘルシーで飽きの来ない身近な食品、お豆腐。お料理だけでなくスイーツにもダイエットにも大活躍。その製法のご紹介-その1

一般的な豆腐

まず、水につけて柔らかくした大豆を水とともに摩砕し煮出すことが必要となります。水とともに摩砕した大豆を(ご)といいます(加熱する前の呉を生呉、加熱した後の呉を煮呉という)。呉をしぼって得られる液体が豆乳ですが、豆乳を作る際、予め加熱して煮呉を漉す製法を「煮しぼり」、生呉のまま漉す製法を「生しぼり」といいます(この場合には漉した後に煮詰めることになる)。しぼった後の滓はおからと呼ばれます。

この豆乳がまだ熱いうちににがり(凝固剤)を加えると蛋白分子が後述するように網目状に繋がり、豆乳はプリン状に固まります。これを切り分け水にさらした物が絹ごし豆腐と呼ばれ、水にさらさず直接容器に掬い上げた物が寄せ豆腐と呼ばれます。また、固まった豆乳を崩しながら、内側に布を敷いた型に入れ、水分を抜くと木綿豆腐となります。さらに、工業的な製法として、豆乳を一旦冷やし、凝固剤といっしょにプラスチック容器に流し込んでから加熱して固める充填豆腐もあります。充填豆腐は保存性に優れ、ものによっては一か月保存できるものもあります。

現在では、近代工業の発達により作業の機械化が進み、わずかの大豆から効率よく豆腐が生産されるようになり、より安価で提供されるようになりました。豆腐はかつては店頭で毎日つくられ、柔らかいので崩れないように水槽の中に沈めて売られるものでありました。現在は工場で生産され、パック詰めで売られているものが主流です。

化学的側面
豆腐の凝固は豆乳のたんぱく質が凝固剤によりゲル化することで起こります。したがって、豆腐は架橋されたたんぱく質の網目構造に多数の水分子を取り込んだ構造です。

大別するとマグネシウムイオンあるいはカルシウムイオンがたんぱく質側鎖のカルボキシル基を架橋してゲルを形成する場合と、酸がたんぱく質の高次構造を変える(変性)ことによりゲルを形成する場合(酸凝固)とがあります。前者には凝固剤として硫酸カルシウム塩化マグネシウム塩化カルシウム硫酸マグネシウム等が使用され、後者はグルコノデルタラクトンが使用されます。グルコノデルタラクトンの徐々に酸(グルコン酸)へと変化する性質が利用されています。なお、グルコン酸はグルコースの有機酸なので安全性は高いものです。

大陸中国では石膏(硫 酸カルシウム)を粉末とし水に溶いたものを凝固剤としていまが、古来の日本の伝統的な製法では製塩の過程で生じるにがりが主に使われていました。現在の日本では硫 酸カルシウムやグルコノデルタラクトンなどが凝固剤として多く使われています。また、中国や韓国でもこの製法を用いる工場があります。

一般的ににがりと 呼ばれているものは、塩化マグネシウムが主成分で、古くは、塩田で海水から塩を作るときに、いっしょに抽出される副産物でした。 現在では、工業化され塩化マグネシウムの純度の高いものや、海外の岩塩採掘場で採取されたもの、あるいは国内外の工業的な製塩の過程で抽出されたものが多 く、実際に塩田から取っているものは少ないようです。また一部豆腐製造業者の間では、凝固剤の総称として「にがり」の呼称を使っている場合もあり、注意が必要です。

戦前までは、このにがりを凝固剤に使用するのが主流でしたが(一部では硫酸カルシウム(すましこ)も使われていた)、やがて統制品に指定されたため入手が困難となりました。そこで同じように凝固反応を起こし、入手の容易な硫酸カルシウム(すましこ)への転換が進んでいきました。硫酸カルシウムはにがりの 主成分である塩化マグネシウムと比べ適正な凝固反応が起こるいわゆる凝固のストライクゾーンが広いため、保水性が高く肌理の細かい高品質な豆腐が、比較的 容易に作りやすかったようです。そのため、戦後も機械化が進むにつれ、凝固材として使いやすい硫酸カルシウムへの転換が進んでいきました。1980年代後半になって、にがりで作られた豆腐の味が見直され始め、最近ではスーパーなどで容易ににがりを使った豆腐が入手できるようになりました。


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